甲府家庭裁判所鰍沢支部 昭和31年(家イ)26号 決定 1956年5月29日
申立人 大田一豊(仮名)
相手方 大田明(仮名)
利害関係人 大田りき(仮名) 外四名
主文
相手方大田明は本調停事件が終了に至るまで申立人大田一豊相手方大田明利害関係人大田ヨネ同大田サダ同松井正男同相川道子同小村みよの共同所有に係る不動産につき相手方の持分たる九分の一につき売買贈与物件の設定等一切の処分行為を禁止する。
この命令に違反したときは五千円以下の過料に処せられることがある。
(家事審判官 金倉三郎)
申立の趣旨
相手方は申立人に対し別紙目録記載の土地に対する九分の一持分に付昭和三一年三月二六日贈与に依る持分移転登記手続をなすことの調停を求む。
申立の実情
一、別紙目録記載の土地は申立人及び利害関係人等の共有で相手方は九分の一の持分を有している。
二、この土地は亡父大田政一の死亡に因り相続をしたものであるが相手方に多額の借財に充てることになり約三八万の弁済をした。
三、上記の如く共有地を売却して相手方の借財に充てるに付昭和三一年三月二六日に別紙目録記載の土地に付ては申立人以外の共有者はその持分全部を申立人に贈与することになりそれ迄相手方と同居していた母りきは申立人が引取り終生扶養することになつたのである。
四、以上の事情で差当り一部の土地に付持分移転の許可を得るためその手続に要する同意書に相手方も承諾同意して農業委員会に手続をしたのであるが相手方はその後同委員会に不同意の意思を表明したため手続は中止されてしまつたのである。
相手方は僅か九分の一の持分を有するに過ぎないのに相続財産の半分にも当る財産を以て自分がつくつた借財に充てており老母を扶養していく申立人としては相手方が承諾した持分の移転をして貰はなくては老母の扶養もできないのでその履行を求むるためこの申立をした次第である。
尚相手方に対し売買、贈与、物件の設定等一切の処分を禁止する旨の調停前の措置を願います。